
2025シーズン、セレッソ大阪はJ1最多得点という輝かしい記録を叩き出している。その攻撃の原動力は、“サイドアタックの質”と“前線の連動性”にある。
鋭いスプリントで裏に抜けるラファエル・ハットン、精度の高いクロスを供給するルーカス・フェルナンデス、そしてライン間で巧みにボールを受け展開する北野颯太。これらの選手の強みが重層的に絡み合い、中央とサイドをつなぐ立体的な攻撃構造を構築している。
指揮を執るのは、元横浜F・マリノスのヘッドコーチであり、ポステコグルーの薫陶を受けたアーサー・パパス。彼は偽サイドバックの起用、3バックビルドアップ、偽9番などの戦術を巧みに用い、セレッソを「ポステコイズムのアップデート版」へと進化させている。
さらに、前線からの統率されたプレスと柔軟なフォーメーション変更(4-2-3-1⇄4-1-2-3)によって、守から攻への移行もスムーズかつダイナミックだ。
その采配ぶりから、ある問いが浮かび上がる——「横浜F・マリノスはパパスを監督にすべきだったのではないか?」
実際に彼は、ポステコグルーの右腕として2019〜2020年にマリノスの攻撃的哲学を支えていた人物。もし彼がそのまま後任となっていれば、スタイルの継承と発展が期待できたかもしれない。さらに、若手育成の巧さや多文化理解も、マリノスの特徴と高い親和性を持っていたはずだ。
もちろん、監督人事は一期一会。だが今、セレッソ大阪で花開くこのフットボールを見ていると、「あの続き」が横浜で見られた未来を想像してしまう——パパスは単なる戦術家ではなく、哲学を再構築する継承者なのかもしれない。