2025年8月、Jリーグの名門クラブ・川崎フロンターレが、クラブ史上初となるヨーロッパ出身選手2名を同時に獲得した。
クロアチア代表歴を持つDFフィリップ・ウレモヴィッチ(28歳)と、元U-19セルビア代表FWラザル・ロマニッチ(27歳)である。この補強は単なる戦力強化にとどまらず、クラブの「欧州化」への明確な意思表示とも受け取れる。
新加入選手
ウレモヴィッチは、ルビン・カザン(ロシア)、シェフィールド・ユナイテッド(イングランド)、ヘルタ・ベルリン(ドイツ)など、欧州主要リーグでの経験を持つセンターバック。
対してロマニッチは、セルビアの名門レッドスター・ベオグラードの育成組織出身で、ギリシャやセルビア国内で活躍してきたウイングアタッカーである。
両者ともに、欧州のフィジカルと戦術理解を備えた即戦力であり、Jリーグのスピードと技術に新たな刺激を与える存在となるだろう。

川崎の欧州化
川崎フロンターレはこれまで、ブラジル人選手を中心とした南米路線を軸に、華麗なパスワークとポゼッションスタイルを築いてきた。しかし、近年のJリーグ全体のトレンドは、よりインテンシティの高いプレースタイルへと移行しており、欧州型の守備的強度や縦への推進力が求められている。今回の補強は、そうした流れに呼応する形で、クラブが新たなフェーズに入ったことを示している。
また、欧州出身選手の加入は、クラブの国際的なブランド力向上にも寄与する。Jリーグはアジア市場では一定の認知を得ているが、欧州との接点はまだ限定的だ。
ウレモヴィッチやロマニッチのような選手が活躍することで、川崎フロンターレの名前が欧州メディアに登場する機会も増え、将来的な海外遠征やグローバルスポンサー獲得にもつながる可能性がある。
もちろん、欧州化には課題もある。言語や文化の違い、プレースタイルの融合には時間がかかるだろう。しかし、川崎フロンターレはこれまでにも、中村憲剛や家長昭博といった知性派選手を中心に、戦術的柔軟性を持つチーム作りをしてきた。その土壌があるからこそ、欧州型のエッセンスを自然に取り入れることができるのだ。
今回の補強は、川崎フロンターレが「アジアの強豪」から「世界に通用するクラブ」へと進化するための布石である。欧州化は単なるトレンドではなく、クラブの未来を切り拓く戦略的選択となり得るだろう。
