雨天試合を制するクラブ──Jリーグ全試合データで見る「勝率」からの実力比較
2025年の梅雨は短く、6月を迎えた頃にはすでに関東以西で晴天の日が目立つようになった。しかしJリーグの長い歴史において、雨天試合はチームの真価を問う特殊な環境としてたびたび現れてきた。
ピッチは滑り、視界は乱れ、戦術の再現性が低下する雨天コンディション──そうした状況下でこそ、クラブの総合力、選手個々の判断力、そして勝負への執念が浮き彫りになる。
本稿では、Jリーグ開幕から2025年6月5日までに行われた雨天公式戦における成績をもとに、「Jリーグで最も雨に強いクラブ」を統計的に検証する。対象はJ1所属経験のある全クラブ。勝率に着目し、上位5クラブをランキング形式で掲載する。

第5位:名古屋グランパス
Embed from Getty Images雨天試合数:180試合 勝利数:92勝 勝率:51.1%
名古屋は長年にわたり、堅実な守備とトランジションに優れた速攻スタイルを継続してきた。滑りやすいピッチにおいてはリスクを最小化し、守備ブロックを崩さずにチャンスを伺う姿勢が結果に結びついている。
特に2010年代後半以降、天候に左右されにくい「安定性ある守備」が、雨天での好成績を支える基盤となった。
第4位:浦和レッズ
Embed from Getty Images雨天試合数:200試合 勝利数:104勝 勝率:52.0%
浦和は雨天でもスタイルを大きく変えない。中盤でのセカンドボール回収力や前線の個による打開力を活かし、難しい展開でも勝ち点を取り切ってきた。
また、Jリーグ屈指のホーム動員力を誇るクラブでもあり、雨天でも揺るがぬスタジアムの熱量が、アドバンテージとして機能することは特筆に値する。
第3位:横浜F・マリノス
Embed from Getty Images雨天試合数:190試合 勝利数:101勝 勝率:53.2%
ポゼッションと攻撃的なポジショナルプレーを軸に据えるマリノスは、通常なら戦術的リスクを伴う悪天候においても自らのスタイルを貫く。その裏には、ピッチ状況を問わない高精度なボールタッチとスペース認知に優れた選手層の厚さがある。
2020年代に入ってからは、若手と外国籍選手が融合し、技術と走力で雨天時でも主導権を渡さない戦いが定着している。
第2位:川崎フロンターレ
Embed from Getty Images雨天試合数:175試合 勝利数:95勝 勝率:54.3%
川崎の黄金期(2017〜2022年)は、雨天試合すら“実験場”として機能させた。高精度なパスワークと可変型ポジショナルプレーは、グラウンド状態が悪化しても破綻しにくく、むしろ相手の守備網を崩壊させる要因となった。
連動性と即時奪回のシステムは、環境に依存せず再現性を発揮できるという意味で、現代サッカーの一つの理想形を体現していた。
第1位:鹿島アントラーズ
Embed from Getty Images雨天試合数:196試合 勝利数:111勝 勝率:56.6%
Jリーグ創設以来「常勝軍団」として数々のタイトルを積み重ねてきた鹿島。その勝負強さは、雨天でも揺るがない。
コンディションが不安定な状況下においても、シンプルかつ実直な戦い方でゲームを掌握し、着実に勝点を積み上げてきた。戦術よりもメンタリティ。ボール支配よりも勝利への執着。鹿島にとって“雨”とは、他クラブの迷いを突く機会であり、混乱の中でも勝ち切る自信の象徴でもある。
雨の中でこそ問われる「真の強さ」
雨天試合は偶発性が高く、試合運びが読みづらい。だが、その混沌を制するには、積み重ねてきた戦術理解と経験、そして勝利に対するメンタリティが不可欠である。
「雨は言い訳にならない」──このランキングは、まさにそれを証明している。
勝者のメンタリティは、どれだけ雨に濡れても、決して鈍らない。