日本の前に立ちはだかるチュニジア代表を徹底分析|10試合連続完封の構造とW杯への課題

チュニジア代表の「鉄壁」化を巡る現状分析

チュニジア代表は、サミ・トラベルシ監督の復帰によって守備的な哲学を明確に再構築した。予選で記録した10試合連続完封は偶然的な産物ではなく、組織全体で共有された守備の原則が、極めて高い精度で発揮された結果である。

特に中盤の中心であるエリアス・スキリが担う役割は大きく、守備の安定と攻撃の始点を同時に支える存在となっている。

一方で、攻撃面の構造は守備ほど洗練されていない。引いた相手に対して明確な崩しのパターンを持たず、強豪国を相手にした際の“第二解”が欠けている。この点が、W杯で長年グループ突破できなかった背景とも重なる。

トラベルシ監督は、2026年W杯と2025年AFCONを短期・中期のターゲットに据え、再開する予選を攻撃改善の試金石として捉えている。


チームデータと現状

アフリカ上位に位置するチュニジアの基盤

チュニジアはアフリカで長年安定した競争力を持つ国だ。FIFAランキングでも常に上位に位置し、モロッコやセネガル、エジプトと並ぶ常連国として国際大会の常識となっている。守備組織の緻密さと、選手の戦術理解度の高さは大陸内でも際立つ特性であり、現チームにもその伝統が色濃く残っている。

現在のメンバー構成を見ると、中盤には欧州でプレーする実力者がそろい、前線にはアジアや湾岸で経験を積んだ選手が配置されている。トラベルシ監督は、この多様なバックグラウンドを持つ選手たちを、整った守備構造の中に組み込みながら起用している。守備のリアリズムを軸にしつつも、攻撃には少しずつ変化を加えている点が読み取れる。


驚異の「10試合連続完封」記録

対戦相手 スコア 結果
第1節 サントメ・プリンシペ 4-0
第2節 マラウイ 1-0
第3節 ギニア 1-0
第4節 ナミビア 0-0
第5節 リベリア 1-0
第6節 マラウイ 2-0
第7節 リベリア 3-0
第8節 ギニア 1-0
第9節 サントメ・プリンシペ 6-0
第10節 ナミビア 3-0

守備面での特筆すべき点は、アフリカ予選で記録した10試合連続完封だ。この数字は、相手の質を考えても異例の成果であり、単純な偶然では説明できない。試合の大半がロースコアで進む傾向があるのは、チュニジアが徹底してリスクを避け、守備ブロックの維持を最優先していることの証明でもある。

一つひとつの試合で、相手の強みを消す守備計画が緻密に設計され、選手それぞれが高い集中力を保ち続けている。ブロックを崩さない姿勢が、勝ち点を確実に積み上げる原動力になっている。守備が試合のリズムを決め、そのまま結果にもつながるモデルが確立している。


最新メンバーにみる“守備×創造性”の配置

最新の招集メンバーには、守備で安定感をもたらす選手と、攻撃の突破口をつくる若手が並ぶ。

まず鍵になるのは、アンカーのエリアス・スキリだ。彼の存在なしにはチュニジアの守備モデルは成立しない。加えて、ハンニバル・メイブリの招集は、攻撃の停滞を打開する意図を示すものとなっている。

さらに、イッサム・ジェバリのような前線からの守備に貢献できるFWがいることで、チーム全体の守備ブロックが前から一定の圧力を維持できる。スリティやサードのワイド陣は、守備と攻撃の切り替えを高速化し、堅守速攻の質を高める役割を担っている。

最新招集メンバーリスト (ポジション別 – 主要選手抜粋)

td style=”border:1px solid #ddd; padding:8px;”>アルハズム
ポジション 選手名 所属クラブ
GK アイメン・ダーメン
GK サブリ・ベン・ハッセン エトワール・サヘル
GK ヌレディン・ファルハティ スタッド・チュニジアン
DF
DF マルワン・サハラウィ スタッド・チュニジアン
DF マフムード・ゴルベル モナスティル
DF モハメド・ベン・アリ エスペランス
DF ヤシン・メリアーレ エスペランス
DF モハメド・アミン・ベン・ハミダ エスペランス
DF ハムザ・ジェラシ エトワール・サヘル
DF アリ・マールル スファクシャン
DF ウサマ・ハダディ ベルカンス
DF ディラン・ブロン セルベット
DF モルタダ・ベン・アネス カスムパシャ
DF モンタサル・タルビ ロリアン
DF アリ・アブディ ニース
DF ヤン・バレーリー シェフィールド・ウェンズデー
MF
MF シヘブ・ジェバリ エスペランス
MF フセム・トカ エスペランス
MF モハメド・アリ・ベン・ロムダン アルアハリー
MF フェルジャニ・サッシ アルガラファ
MF フィラス・ベン・ラルビ シャルジャ
MF モハメド・ハジ・マフムード ルガーノ
MF イスマエル・ガルビ アウクスブルク
MF エリアス・スキリ フランクフルト
MF ハンニバル・メイブリ バーンリー
FW
FW エリアス・サード アウクスブルク
FW ナシム・デンダニ モナコ
FW エリアス・アシュリ コペンハーゲン
FW アモール・ラユニ ヘッケン
FW イッサム・ジェバリ ガンバ大阪
FW ナイム・スリティ アルシャマル
FW セイフェディン・ジャジリ ザマレク
FW フィラス・シャウァ クラブ・アフリカン

監督の哲学と再建計画:サミ・トラベルシの帰還

守備を基礎としたトラベルシ哲学

トラベルシ監督は、現役時代にW杯を経験した元DFで、守備の専門家として知られる。彼が再任された背景には、チュニジアの守備的DNAを再構築する狙いがある。過去の代表指揮経験もあり、チュニジアという国のサッカー文化を深く理解している点も重要になる。

守備の規律を徹底する考え方は、彼のキャリア全体に一貫して存在する。選手の距離感やプレッシングの方向、ボールロスト後の即時対処に至るまで、守備の細部にこだわりが見える。


過去の指導実績とカタールでの成功

トラベルシ監督は、現役時代にW杯を経験した元DFで、守備の専門家として知られる。彼が再任された背景には、チュニジアの守備的DNAを再構築する狙いがある。過去の代表指揮経験もあり、チュニジアという国のサッカー文化を深く理解している点も重要になる。

守備の規律を徹底する考え方は、彼のキャリア全体に一貫して存在する。選手の距離感やプレッシングの方向、ボールロスト後の即時対処に至るまで、守備の細部にこだわりが見える。


カタールでの10年政権が示す“浸透力”

アル・サイリヤでの10年間は、現代では極めて珍しい長期政権だ。ここでは、戦術の浸透とチーム文化の構築が徹底され、カップ戦で複数のタイトルを獲得した。短期決戦で結果を出す能力は、AFCONやW杯のような大会で大きな意味を持つ。

長期間チームを率いる指揮官に必要な要素は、選手の信頼と、戦術のアップデートを続ける柔軟性だ。トラベルシ監督はこの両面を兼ね備えており、今回の代表チーム再建においても同じ能力が発揮されている。


守備的リアリズムと速い攻撃の両立

チュニジアが採用する守備的モデルは、守備ブロックの維持と、トランジション時の最適解を重視する。攻撃では、細かい崩しではなく、縦方向の速いパスやサイドチェンジを選択する傾向がある。これは、アフリカ予選のような消耗戦では特に有効だ。

安定感を保つためには、守備での判断を統一し、攻撃でのリスクを適切に管理する必要がある。トラベルシ監督はそのバランスを巧みに取っている。


4. なぜチュニジアは「鉄壁」なのか?

完封の背後にある守備構造

チュニジアの守備は、単なるリアクション型ではなく、明確な意図と仕組みを持つ構造体だ。

まずライン間の距離を極端に短く設定し、中央のスペースを完全に消す。相手に“前進しても何も起きない”と錯覚させるほど中央は密度が高い。ここが崩れない限り、相手の攻撃は外へ流れるしかない。

サイドへ追い込まれた相手は、判断の選択肢を失い、単発の突破に頼らざるを得なくなる。そこを複数人で囲ってボールを奪う。このプロセスが、試合を通してほとんど破綻しない。

つまり、チュニジアは「相手に攻めさせているようで、実は攻めさせていない」守備を成立させている。


スキリが支配する“ハーフスペースの死角”

エリアス・スキリは、守備ブロックの軸であり、戦術全体を機能させる“可動式アンカー”だ。

彼の最も重要な能力は、危険なパスラインを先読みして切ることで、ハーフスペースの“死角”を消す点にある。

チュニジアは、最終ラインが必要以上に下がらないことでブロックを一定位置に保つが、それを可能にするのがスキリの広い守備範囲だ。中央のカバーが緩むタイミングはほぼ存在せず、相手の縦パスを寸断する役割を一人で担う。

もし彼が不在なら、守備ブロックは根本から形を失う。スキリは“選手”ではなく“戦術”そのものである。


ベースとなる4-3-3と、その可変性

トラベルシ監督の基盤は4-3-3だが、守備時は4-5-1へ自然と変形する。

この形では、相手の前進ルートを中央から完全に排除し、相手の攻撃を外側へ固定する効果がある。ポイントは「中盤のラインが一切間延びしない」点だ。

攻撃時の後ろ向きなパスを狙い、奪った瞬間の“最短距離の前進”に備えた構造が作られている。

4-4-2への移行は特殊条件下のみで、基本的には中央を固める4-3-3が軸となる。


攻撃の未成熟とポジショナルアタックの限界

チュニジアの戦術は、極端な守備的成功の裏側で、攻撃面での犠牲を伴っている。すなわち、守備がA+評価であるのに対し、攻撃はC+程度にとどまっている可能性がある。

相手が引いて守備ブロックを形成した場合、それを崩すための洗練されたポジショナルアタックに苦慮している。これは、チュニジアが過去のW杯で1次リーグ突破の経験がないという壁の根源的な原因である。

国際舞台では、相手が引いて守る「格下」ではなく、洗練された守備を持つ「強豪」と対峙するため、攻撃力の不足は致命的となり得る。

したがって、チュニジアの攻撃成功の鍵は、質の高いトランジションと個の能力に依存する。ハンニバル・メイブリのような創造性を持つ選手が、中央やサイドの狭いエリアでDFラインを切り崩す。またはFWクロスやセットプレーといった少ないチャンスを、身体の強さや決定力によって確実に仕留められるかにかかっている。


成功の鍵を握るタレント

中盤のエンジン:エリアス・スキリ

エリアス・スキリは、トラベルシ監督の戦術をフィールドで具現化する、まさにチームのエンジンである。彼は単にボールを奪うだけでなく、ボール奪取後の即座の安全な配球によって、守備から攻撃への切り替え(トランジション)の起点を担う。彼のタックル成功率、インターセプト数、そしてパス成功率は、中盤における安定性とインテリジェンスの高さを示している。

スキリが不在の場合、中盤の守備的な強度が大幅に低下するだけでなく、守備ラインが前線からのサポートを失い、不安定になるリスクがある。彼の存在は、チュニジアの戦術的リアリズムの実現に不可欠であり、国際大会での成功は彼のコンディションに大きく左右される。


新世代の希望::ハンニバル・メイブリ

マンチェスター・ユナイテッドからバーンリーへローン移籍したハンニバル・メイブリは 、チュニジアの攻撃的な未来を象徴するタレントである。彼は攻撃的MFまたはインサイドハーフとして、中盤でボールを保持し、ドリブル突破や予測不可能なスルーパスで相手DFラインに亀裂を入れる能力を持つ。

彼の招集と起用は、トラベルシ監督が攻撃力の不足という課題を認識し、メイブリの自由な創造性をチームに組み込もうとしている試みと解釈できる。しかし、堅守を旨とするトラベルシ体制において、メイブリの攻撃的な自由を、守備的な規律とどのように両立させるか、そのバランスを見極めることが、チーム全体の攻撃力向上に直結する。


決定力と貢献性:イッサム・ジェバリ

ガンバ大阪に所属するイッサム・ジェバリ は、トラベルシ戦術におけるFWの役割を完璧に体現している。彼は単にゴールを奪う「点取り屋」としてだけでなく、守備時には前線からの献身的なプレッシングの開始点となる。彼のフィジカルコンタクトの強さと運動量は、守備戦術の第一線として非常に重要である。

攻撃面では、ジェバリはハイレベルなポジショナルアタックを要求されるよりも、速いカウンターアタックやセットプレーの際に、少ないチャンスを確実に決めきる能力が求められる。Jリーグで培った戦術的な適応能力とハードワークは、チュニジア代表の効率的な攻撃を支える上で欠かせない要素である。


その他の注目選手

ナイム・スリティ(アル・シャマル/カタール)やエリアス・サード(アウクスブルク/ドイツ)ら、ワイドなポジションの選手たちも重要な役割を担う。

彼らは守備時にはサイドバックを迅速にサポートし、相手の攻撃を遮断する。そして、ボール奪取後の速いカウンター時には、自らのスピードと個人技を活かしてサイドを突破し、ジェバリら中央の選手へのチャンスメイクを行う。彼らの守備貢献度とトランジションのスピードが、堅守速攻の完成度を左右する。


6. 結論と今後の展望

チュニジア代表はアフリカ屈指の守備力を持ち、10試合連続完封という異例の記録がその強さを裏付けている。しかし国際舞台では、守るだけでは勝ち切れず、攻撃面の課題が壁として立ちはだかる。特に、引いた相手を崩すパターンが乏しく、ハイプレスを外す手段も十分ではない点が、試合の流れを左右できない最大の要因となる。

守備モデルが完成形に近いからこそ、攻撃の未成熟が強調されてしまい、W杯で長年グループ突破できていない状況と重なる。今後トラベルシ監督に求められるのは、守備を維持したまま攻撃に新しい層を加える作業であり、ハンニバル・メイブリの創造性を中心に据えることで、攻撃へ“別解”を生み出せる可能性がある。

攻撃の再現性を高めることができれば、チュニジアは堅守に依存する国から、自ら試合を動かす力を持つ国へと変貌し、W杯で番狂わせを起こせる位置に到達するだろう。


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