チームを支える“唯一無二の存在”──ワンクラブマンという価値
| 順位 | 選手名 | クラブ | 在籍年数 | リーグ戦出場 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | 城後 寿 | アビスパ福岡 | 21年目 | 488試合 |
| 2位 | 大島 僚太 | 川崎フロンターレ | 15年目 | 230試合 |
| 3位 | 喜田 拓也 | 横浜F・マリノス | 13年目 | 293試合 |
| 4位 | 車屋 紳太郎 | 川崎フロンターレ | 12年目 | 252試合 |
| 5位 | 早川 史哉 | アルビレックス新潟 | 10年目 | 100試合 |
| 6位 | 前川 黛也 | ヴィッセル神戸 | 9年目 | 173試合 |
| 7位 | 大迫 敬介 | サンフレッチェ広島 | 8年目 | 209試合 |
| 7位 | 福岡 慎平 | 京都サンガF.C. | 8年目 | 226試合 |
| 7位 | 脇坂 泰斗 | 川崎フロンターレ | 8年目 | 216試合 |
| 8位 | 関川 郁万 | 鹿島アントラーズ | 7年目 | 141試合 |
| 8位 | 森田 晃樹 | 東京ヴェルディ | 7年目 | 254試合 |
| 8位 | 黒川 圭介 | ガンバ大阪 | 7年目 | 140試合 |
| 8位 | 細谷 真大 | 柏レイソル | 7年目 | 171試合 |
Jリーグには、華やかな移籍市場の裏で、ひとつのクラブにキャリアを捧げる稀有な存在がいる。いわゆる“ワンクラブマン”だ。欧州と比べて移籍が活発な日本では、長期にわたって同じクラブで戦い続ける選手は決して多くない。それだけに、彼らの存在はクラブの歴史や文化を色濃く映し出し、サポーターとの結びつきも深い。
本稿では、2025シーズン時点で「同一クラブ在籍7年以上」の選手をワンクラブマンとして定義し、クラブの象徴として語られるべき13名をピックアップした。また、在籍5〜6年の“プレ・ワンクラブマン”も別枠で紹介し、これからクラブの顔となり得る次世代の存在にも触れていく。
移籍の時代だからこそ、変わらずそこに立ち続ける選手の価値が際立つ。クラブを支え、文化をつなぎ、サポーターとともに歩み続ける彼らの軌跡に目を向けたい。
ワンクラブマンとは何か|日本サッカーにおける“希少性”
欧州では生涯同じクラブでプレーする選手が時折誕生するが、日本では事情が大きく異なる。契約年数の短さ、移籍市場の動きやすさ、選手寿命の変化などがあり、長期定着は年々難しくなっている。
だからこそ、7年以上の在籍は“クラブの歴史に名を刻むレベル”と言ってよい。クラブの象徴、文化の伝承者、若手の模範――
その役割はピッチ上のプレーを超えて広がっていく。
在籍年数 × 出場数の散布図

選手の“クラブへの貢献度”をデータで可視化する意味で、在籍年数とリーグ戦出場数の相関はわかりやすい指標になる。散布図を見ると、長期在籍組でもタイプが大きく分かれることがわかる。
- 出場数も年数も突出する「城後・喜田・森田」型
- 年数は長いが出場が限定される“屋台骨サブ”型
- 若くして主力となり年数を重ねている“伸び盛り型”
それぞれの背景がプレースタイルやクラブの状況とも密接に結びついている。
在籍7年以上の“真”ワンクラブマン|13名のランキング紹介
ここからは、在籍年数ランキングに沿って紹介していく。
1〜3位|クラブの歴史を背負う“象徴的ワンクラブマン”
● 城後寿(アビスパ福岡)|在籍21年目
Embed from Getty Images出場数:488試合
福岡一筋の象徴的存在。トップ下からボランチ、最終ラインまで担う万能性と、勝負どころでの得点力で長年チームを支えてきた。昇格争い・残留争いのどちらでも頼られ、福岡の文化そのものを体現するクラブのレジェンド。
● 大島僚太(川崎フロンターレ)|在籍15年目
Embed from Getty Images出場数:230試合
フロンターレの黄金期を支えた司令塔。柔らかなタッチと前進するパスワークはリーグ屈指で、チームのスタイルを象徴する存在。負傷に悩まされながらも、川崎が最も川崎らしいサッカーをする時、中心にいるのが大島だった。
● 喜田拓也(横浜F・マリノス)|在籍13年目
Embed from Getty Images出場数:293試合
育成出身でキャプテンとしてタイトルを牽引。圧倒的な守備強度と球際の執念、ゲームを締める試合巧者ぶりでチームを安定させる。ライバルの多い環境でも競争に勝ち続け、横浜FMの精神的支柱として欠かせない存在。
4〜6位|クラブを安定させる“屋台骨タイプ”
● 車屋紳太郎(川崎フロンターレ)|在籍12年目
Embed from Getty Images出場数:252
左SBとCBを高いレベルでこなすマルチロール。ビルドアップの起点となる技術と、冷静な判断力で川崎の土台を支えてきた。派手さはないが安定感は抜群で、複数タイトル獲得期の守備陣における静かな柱。
● 早川史哉(アルビレックス新潟)|在籍10年目
Embed from Getty Images出場数:100試合
新潟育成の象徴的存在。病から復帰したストーリーはJリーグ屈指の勇気を与えるもので、復帰後も複数ポジションで献身的にプレー。勝利への執念とクラブ愛はサポーターから強く支持され、新潟の精神面を支える重要な選手。
● 前川黛也(ヴィッセル神戸)|在籍9年目
Embed from Getty Images出場数:173試合
神戸の守護神として成長を続け、安定感あるショットストップとビルドアップ参加の精度で評価を高めてきた。タイトル獲得期の中心で、守備の最後尾としてチームに安心感をもたらす存在。日本代表にも近づく実力者。
7〜10位グループ|長期定着の“主力組”
7位タイ|在籍8年
● 大迫敬介(サンフレッチェ広島)
出場数:209試合
10代で台頭し、広島の正GKとして地位を確立。驚異的な反射神経と足元の技術を兼ね備え、若くして主力の座を譲らない。守備組織の中心として信頼が厚く、日本代表でも競争を続ける将来性豊かな守護神。
● 福岡慎平(京都サンガF.C.)
出場数:226試合
京都の中盤を支える屋台骨。豊富な運動量とボール奪取力、局面を前に進める推進力が持ち味。育成年代からクラブに根づく“走るサッカー”を体現し、京都がJ1で安定するためのキーマンとして存在感を放つ。
● 脇坂泰斗(川崎フロンターレ)
出場数:216試合
川崎の攻撃を操るリンクマン。中盤と前線を滑らかにつなぐパスセンス、ゴール前での創造性、ハードワークを兼ね備える万能型MF。移籍せず競争を勝ち抜いてきた背景には、高い戦術理解と川崎らしさの体現がある。
● 関川郁万(鹿島アントラーズ)
出場数:141試合
対人の強さと闘争心で鹿島の最終ラインを支えるDF。攻撃的でタフな守備は“鹿島らしさ”を象徴し、勝負強さを裏付ける成長を見せている。近年の世代交代期において、守備の中心として期待される存在。
10位タイ|在籍7年
● 森田晃樹(東京ヴェルディ)
出場数:254試合
ヴェルディ育成の技術力を体現する攻撃的MF。ボールの持ち方、間で受けるセンス、攻撃のリズムを作る能力に優れ、J1昇格の過程でも主軸となった。クラブ哲学にフィットする希少な“緑の10番タイプ”。
● 黒川圭介(ガンバ大阪)
出場数:140試合
上下動を繰り返すアグレッシブな左SB。縦への推進力とクロス精度の高さで攻撃を押し上げる一方、守備の粘りも光る。ガンバの若返りと再編期において、サイドの重要な競争力を担う存在として位置づけられる。
● 細谷真大(柏レイソル)
出場数:171試合
柏育成の最新アタッカーで、守備もこなす万能型ストライカー。前線の連動性、裏抜け、強度ある守備が特徴で、チームの攻守バランスを整える役割も担う。若くして主力を張り続け、柏の顔として成長を続ける。
プレ・ワンクラブマン(在籍5〜6年)|次世代の象徴候補
7年以上組に続く存在が、在籍5〜6年の“プレ・ワンクラブマン”だ。この層はクラブの中心に入りつつあり、数年後には“クラブの顔”として語られる可能性が高い。
| 在籍年数 | 選手名 | クラブ | リーグ戦出場 |
|---|---|---|---|
| 6年目 | 舘 幸希 | 湘南ベルマーレ | 112試合 |
| 6年目 | 西尾 隆矢 | セレッソ大阪 | 118試合 |
| 6年目 | バングーナガンデ佳史扶 | FC東京 | 68試合 |
| 6年目 | 山川 哲史 | ヴィッセル神戸 | 163試合 |
| 5年目 | 橘田 健人 | 川崎フロンターレ | 201試合 |
| 5年目 | 木村 太哉 | ファジアーノ岡山 | 201試合 |
| 5年目 | 深澤 大輝 | 東京ヴェルディ | 111試合 |
| 5年目 | 平岡 大陽 | 湘南ベルマーレ | 106試合 |
| 5年目 | 早川 友基 | 鹿島アントラーズ | 142試合 |
在籍6年(2020〜)
・舘幸希(湘南出場数:112試合
・西尾隆矢(C大阪)出場数:118試合
・バングーナガンデ佳史扶(FC東京)出場数:68試合
・山川哲史(神戸)出場数:163試合
在籍5年(2021〜)
・橘田健人(川崎F)出場数:201試合
・木村太哉(岡山)出場数:201試合
・深澤大輝(東京V)出場数:111試合
・平岡大陽(湘南)出場数:106試合
・早川友基(鹿島)出場数:142試合
彼らの多くは20代前半〜中盤。ここからさらに年数を積み上げれば、“生え抜きの象徴”としてクラブ史に名を残す可能性は十分ある。
クラブの歴史は、ワンクラブマンがつくる
移籍が当たり前となった現代サッカーにおいて、同じクラブで長く戦い続ける選手は、それだけで強烈な価値を持つ。サポーターが愛し、クラブが頼り、若手が背中を追い、スタジアムの空気を変える存在――
それが“ワンクラブマン”だ。
そして、次の世代を担うプレ・ワンクラブマンたちもまた、数年後には同じようにクラブ文化を支える存在となっていくだろう。
クラブを愛し、クラブに愛された選手たちの物語は、Jリーグというリーグの魅力をさらに豊かにしていく。

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