2025年6月26日、日本から唯一の出場である浦和レッズはクラブW杯で3戦全敗、早々に大会を後にすることが決まった。内容もスコアも、世界との決定的な差を突きつけられる形となったが、そこには日本サッカーの「課題」と「希望」も、はっきりと浮かび上がっていた。
試合内容から見えた明確な実力差
モンテレイ戦(0‑4)では、前半だけで3点を奪われ、試合の趨勢は早々に決した。守備陣は一瞬の加速やスイッチの切り替えに反応しきれず、スピード・判断力・身体強度といったあらゆる面で後手に回った。局面ごとのポジショニングも曖昧で、ライン間の連携が破綻しかける場面が何度もあった。
その後の2試合でも、延長戦に持ち込むような粘りは見せられず、スコア以上に“内容で圧倒された”という印象が残った。決定力の不足、守備ブロックの不安定さ、戦術の引き出しの少なさ――いずれも、世界のトップクラブと伍するには程遠い現実を突きつけられる結果となった。
Jリーグクラブの抱える課題とは──世界との差が露呈した根本要因
1. 国際経験の欠如
世界トップレベルとの対戦経験が圧倒的に足りない。ACLで勝ち上がっても、CWCのような“勝たねば終わる”本気のトーナメントを戦った経験は乏しい。局面ごとの判断や球際の強度に差が出たのは、積み重ねてきた場数の違いに他ならない。
2. 戦術のアップデート不足
ポゼッション志向が強すぎる一方で、リスク管理の意識が薄い。相手がギアを上げた瞬間に脆さを見せた。ビルドアップの場面でも予測と選択肢が少なく、速いプレッシャーに対する脱出パターンがない。欧州や南米のように、相手に応じて戦術を使い分ける柔軟さが求められる。
3. 指導者層の限界
国内で通用する指導者は多いが、国際基準で戦える戦術眼・修正力を持つ人材はまだ少ない。JFAのライセンス制度が閉鎖的で、欧州・南米で実績を持つ指導者の参入が難しい点も足かせになっている。
4. 個の力の弱さ
フィジカル、スピード、判断力、メンタル。どれを取っても「この選手なら打開できる」という存在がいなかった。1対1で剥がす、身体を張って止める、状況を読む。そういった個人での解決力が、明確に足りない。
5. 競争環境の甘さ
Jリーグは全体的に“均衡”を保ちすぎており、サバイバルがない。下位チームでも戦えてしまう構造が、トップレベルでの競争力を削いでいる。シビアな生存競争がなければ、世界に通用するメンタリティは育たない。
6. 分析とテクノロジーの遅れ
スタッツ分析、試合中のリアルタイムフィードバック、VR活用など、世界の最先端と比べてまだ遅れている。技術導入は進んでいるが、現場に落とし込む力が弱い。

それでもJリーグには「希望」がある──CWCの経験が残した財産
これまで“情報として知っていた”世界レベルに、実際に触れたことのインパクトは大きい。選手も監督も、本当の「世界との差」を体感した。敗北は痛いが、それによって得た基準は、国内リーグを改善する起爆剤になる。
CWCでの敗戦は、日本サッカー界にとっての“警鐘”だった。これまでの「国内で勝つこと=強さ」という価値観が通用しない現実を突きつけられた以上、今後はACLやCWCといった国際舞台を明確に意識したクラブ経営が求められる。補強戦略から戦術構築、選手のコンディション管理に至るまで、世界基準を軸とした長期的視点への移行が急務だ。
また、欧州クラブとのスケジュール格差が再び浮き彫りになった今、秋春制の導入を含むリーグカレンダーの再編も、議論の俎上に乗るだろう。欧州と足並みを揃えることで、選手の移籍タイミング、国際大会への備え、コンディション調整といったあらゆる側面において“世界と戦う準備”が可能になる。これまで避けてきた制度改革の必要性が、敗戦によってあらためて突きつけられた格好だ。
さらには、欧州や中東のリーグへ選手を送り出す流れも、もはや“流出”ではなく“強化”として前向きに捉えるべき時代に入った。外に出て戦う人材を育て、また日本に還流させる。グローバルなサイクルを前提としたクラブ設計が不可欠になってくる。
韓国Kリーグ勢もCWCでは厳しい結果が続いている。アジア勢が団結し、AFCとしてCWCに通用するクラブ作りを目指す流れも生まれるかもしれない。日本がその先頭に立つべきタイミングが来ている。
敗北には感情がある。課題には数値がある。この両方がそろった今だからこそ、現場とフロントが一体となって「変革」に向かえる。この3連敗は浦和だけの問題ではない。戦術や選手だけでなくクラブ全体の意識改革こそが、Jリーグ最大の武器になる。
CWC3連敗は、挫折ではなく進化の号砲
敗れたからこそ、見えたことがある。足りなかったのは「才能」ではない。「準備」と「仕組み」だ。敗戦のデータを正確に分析し、選手の育成と戦術の再構築に着手すれば、Jリーグにも再浮上のチャンスはある。世界と戦うには、今ここで変わるしかない。
