基本プロフィール
岩田智輝は1997年4月7日生まれ、三重県出身のプロサッカー選手だ。右利きを基本とし、センターバック、サイドバック、ボランチと複数ポジションを主戦場とする。身長178cm、体重76kgと突出した体格ではないが、その分、状況判断とポジショニングで勝負するタイプである。
特に評価されてきたのは、試合の流れを読む力と守備局面での冷静さだ。派手なプレーよりも、チーム全体のバランスを保つ役割を優先する姿勢は、プロ入り当初から一貫している。その安定感が、監督やチームメイトからの信頼につながってきた。
| シーズン | クラブ | リーグ | 出場 | 得点 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2016-2020 | 大分トリニータ | J1 / J2 | 112 | 7 | 主力として定着 |
| 2021-2023 | 横浜F・マリノス | J1 | 66 | 2 | 2022年MVP |
| 2023(loan) | セルティック | スコットランド | 13 | 0 | 期限付き移籍 |
| 2023-2024 | セルティック | スコットランド | 19 | 1 | 国内リーグ |
| 2024-2025 | バーミンガム・シティ | EFLリーグ1(3部) | 40 | 6 | 昇格に貢献 |
| 2025-2026 | バーミンガム・シティ | EFLチャンピオンシップ | 21 | 1 | ※シーズン途中 |
大分で培われた土台
岩田は四日市南SSCでサッカーを始め、その後、大分トリニータの育成組織に加入した。U-15宇佐、U-18と順調にステップアップし、2015年にトップチームへ昇格している。この段階から、複数ポジションを経験する下地が作られていた。
プロ初期の岩田は、特定のポジションに固定される選手ではなかった。サイドバック、3バックの一角、ボランチと、チーム事情に応じて役割を変えながら起用されている。その中で、試合ごとに求められるタスクを理解し、確実に遂行する姿勢が評価を高めていった。
さらに、大分在籍中はリーグ戦で100試合以上に出場し、若くして主力クラスに定着している。継続的に出場機会を得たことで、試合勘と対人対応力が磨かれ、この時期に積み重ねた実戦経験が後のキャリアを支える大きな土台となった。
横浜F・マリノスでの覚醒
2021年、岩田は横浜F・マリノスへ完全移籍する。一方で、加入当初から主軸として期待されていたわけではなく、サイドバックを中心とした起用が続いた。環境の変化に適応する時間も必要だった。
しかし、その中で与えられた役割を着実にこなすことで、徐々にチーム内での信頼を獲得していく。さらに、センターバック起用に踏み切られると、岩田の評価は大きく変わった。対人守備の安定感、ラインコントロール、そしてビルドアップへの関与が噛み合い、最終ラインの要として存在感を放つようになる。
結果として、2022年シーズンはJ1リーグ優勝に貢献した。守備的ポジションでは異例となるJリーグMVPとベストイレブンを同時受賞し、リーグ全体に強い印象を残した。この受賞は、個人能力だけでなく、チーム戦術の完成度を体現した存在であったことを示している。
海外挑戦:セルティックからイングランドへ
マリノスでの成功を経て、岩田は2023年1月にセルティックFCへ完全移籍した。スコットランドの名門クラブで、タイトル獲得を経験し、欧州サッカーの環境に身を置くことになる。日本とは異なるテンポや強度に触れた点も、大きな経験となった。
しかし、その中で出場機会は限定的だった。そこで新たな挑戦の場として選んだのが、イングランドのバーミンガム・シティだった。2023年夏に期限付き移籍し、環境への適応を進めた後、2024年夏には完全移籍へと移行している。
現在はEFLチャンピオンシップという、フィジカルと試合強度が非常に高いリーグで主力としてプレーを継続している。その土台となったのが、2024-25シーズンのEFLリーグ1での活躍だ。3部に該当するリーグ戦ながら40試合6得点を記録し、守備的なポジションの選手でありながら攻撃面でも明確な数字を残した。
その結果、バーミンガム・シティは1年でのチャンピオンシップ復帰を果たしている。
岩田はその過程で起用法の幅を広げ、守備の安定だけでなく試合展開を前進させる役割も担うようになった。現在の主力定着は、昇格シーズンで積み重ねた信頼の延長線上にある。
戦術理解力で評価を高めたプレースタイル
岩田智輝の最大の特長は、戦術的柔軟性の高さにある。センターバックとしては対人守備とカバーリングを担い、ラインコントロールにも長けている。一方で、ボランチに入ればボール奪取役として中盤の強度を支え、攻守の切り替えを安定させる役割を果たす。
特筆すべきは、役割が変わってもプレーの質が大きく落ちない点だ。これは単なる器用さではなく、試合全体の構造を理解した上で判断していることの表れと言える。監督の戦術変更や試合中の配置転換にも対応できる点は、実戦において非常に大きな価値を持つ。
さらに、読みを活かしたクリーンなボール奪取も岩田の持ち味だ。無理なチャレンジを避け、ポジション取りで相手の選択肢を制限する守備は、チーム全体のリスク管理にも直結する。その結果として、警告や退場のリスクが低い点も評価されてきた。
加えて、90分間を通じて運動量とインテンシティを維持できる点も見逃せない。特にイングランドのような強度の高いリーグにおいて、この継続性は主力として起用されるための重要な要素となっている。
岩田智輝を象徴するエピソード
2019年、大分時代のヴィッセル神戸戦では、アンドレス・イニエスタとの競り合いが大きな話題となった。ボール奪取の局面で接触が起き、小競り合いに発展。温厚で知られるイニエスタが感情を露わにした場面は、スペインの有力紙でも報じられている。岩田は後に「当たった瞬間は誰か分からなかったが、そこでやめてもなと思った」と語っており、相手の名前や立場に左右されずプレーに向き合う姿勢を象徴する出来事だった。試合後には握手を交わし、後日あらためて謝罪も行われている。
岩田のルーツである四日市南SSCは、西川周作や松原健を輩出した育成組織として知られる。松原とは学年差があるものの在籍時期が重なり、後に横浜F・マリノスで再び同じクラブに所属する縁につながった。
また、2019年には東京五輪世代中心で構成された日本代表に選出され、コパ・アメリカ2019のウルグアイ戦でスタメン出場しA代表デビューを果たす。その後は招集から遠ざかったが、2022年にマリノスでJリーグMVPを受賞すると、EAFF E-1選手権で約3年ぶりに代表復帰。主軸ではないものの、役割理解と対応力を評価され続けてきた。2020年5月に結婚し、私生活の安定とともにキャリアを伸ばしている。
岩田智輝の現在地
岩田智輝は、大分で培った多機能性を武器に、横浜F・マリノスでJリーグMVPという頂点に立った守備者だ。その後も現状に満足することなく、セルティックを経てイングランドという新たな舞台へ挑戦を続けている。
2024-25シーズンには、EFLリーグ1(イングランド3部)で主力としてプレーし、40試合6得点を記録。守備的なポジションながら攻撃面でも数字を残し、チームの1年でのチャンピオンシップ復帰に大きく貢献した。
現在はEFLチャンピオンシップという、フィジカルと試合強度が非常に高いリーグで主力として起用されている。派手さよりも信頼性を積み重ねてきたキャリアは、マリノスOBの中でも異色であり、同時に極めて現代的だ。岩田智輝の歩みは、これからも注目される存在であり続ける。

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