サンフレッチェ広島が松本泰志の完全移籍加入を発表
2026年1月3日、J1のサンフレッチェ広島は、浦和レッズからMF松本泰志が完全移籍で加入することを公式発表した。2025年シーズンに地元である埼玉県を本拠地とする浦和へ完全移籍した松本にとって、わずか1年での広島復帰となる。
松本は広島のクラブ公式サイトを通じ、「1年前、自分のわがままで移籍したにもかかわらず、また一緒に戦おうと言ってくれた久保会長、クラブの皆様に感謝しています」とコメントを発表。27歳という選手として脂が乗る時期に、再び広島の地で戦う決断を下した。
浦和レッズでの1年間と残されたスタッツの足跡
松本泰志は2025年シーズン、浦和レッズにおいてリーグ戦29試合に出場した。そのうち先発出場は14試合、途中出場は15試合を数える。出場時間は1,312分、得点は3ゴールを記録した。
特筆すべきは第24節のFC東京戦である。この試合で松本は逆転ゴールを含む2得点を挙げ、勝負強さを発揮した。一方で、全38試合のうち先発が半数以下に留まった事実は、層の厚い浦和の中盤において完全な定位置確保には至らなかった側面も示唆している。
警告数はシーズン通して0であり、クリーンかつ献身的な守備対応を継続したことが数字に表れている。
昌平高校から広島、そしてレンタル先で磨かれた多様性
| 年 | クラブ(カテゴリ) | 出場 | 得点 | アシスト |
|---|---|---|---|---|
| 2018 | 広島(J1) | 3 | 0 | 0 |
| 2019 | 広島(J1) | 15 | 0 | 0 |
| 2020 | 福岡(J2) | 25 | 1 | 2 |
| 2021 | C大阪(J1) | 2 | 0 | 0 |
| 2021 | 広島(J1) | 10 | 0 | 0 |
| 2022 | 広島(J1) | 23 | 3 | 0 |
| 2023 | 広島(J1) | 17 | 0 | 0 |
| 2024 | 広島(J1) | 36 | 3 | 2 |
| 2025 | 浦和(J1) | 29 | 3 | 2 |
出典:Jリーグ公式(2025年12月確認)
松本のキャリアを遡ると、埼玉県の名門・昌平高校時代は卓越した技術を武器にするドリブラーであった。2017年にサンフレッチェ広島へ加入後、アビスパ福岡(2020年)、セレッソ大阪(2021年)への期限付き移籍を経験。守備強度やハードワークを求められる環境に身を置いたことで、ボランチとしての資質を大きく開花させた。
特に2024年シーズンの広島では、リーグ戦36試合に出場し、32試合でスタメンに名を連ねた。走行距離やスプリント回数においてチームトップクラスの数値を叩き出し、スキッベ監督が標榜する「アグレッシブなサッカー」の体現者として、優勝争いを演じるチームの不可欠なピースとなった経緯がある。
背番号17に込めた世界最高峰MFへの憧憬
松本泰志を象徴する要素の一つに、背番号「17」がある。広島在籍時に「32」から「17」への変更を自ら希望した背景には、マンチェスター・シティに所属するケビン・デ・ブライネへの強い憧れがある。
「デ・ブライネがめちゃめちゃ好き」と公言する松本は、同選手が背負う17番を自身のアイデンティティとした。単なるボランチに留まらず、3列目からの鋭い飛び出しや、攻撃の局面で決定的な仕事に関与しようとするプレースタイルは、この憧れを原動力に磨かれてきたものだ。
広島への復帰に際し、この17番を再び背負うことになるのか、あるいは新たな番号になるのかはファンが注目するポイントの一つとなっている。
異例のスピード復帰が示唆するクラブとの信頼関係
1年での復帰は、Jリーグの移籍市場においても極めて稀なケースといえる。一般的に、一度完全移籍で離脱した選手が短期間で戻る背景には、選手の強い要望か、クラブ側による切実な補強ニーズの合致がある。
今回の移籍において松本が「久保会長」の名前を具体的に挙げた点は見逃せない。通常、選手の移籍コメントで会長個人への感謝が綴られるのは異例だ。これは、松本が浦和で直面した葛藤や「地元でプレーする」という夢を果たした後の心情を、広島側が深く理解し、受け入れた構造を物語っている。
数字の上では2025年の浦和でも3ゴール2アシストと一定の貢献は見せていたが、出場時間の推移を見ると、シーズン後半にかけてスタメンから外れる試合も散見された。かつて広島で「心臓」を担っていた自負からすれば、物足りなさを感じていたとしても不思議ではない。この違和感を、広島側が「再び中心として迎え入れる」という熱意で埋めた格好だ。
新スタジアムのピッチに再び刻まれる走行距離
2026年、松本泰志は再びエディオンピースウイング広島の芝を踏む。広島の戦術において、中盤の強度はそのまま勝敗に直結する。浦和での経験を経て、より洗練された判断力や勝負強さを持ち帰った松本が、加藤陸次樹ら旧知のチームメイトとどのような化学反応を見せるか。
一度外の世界を見たことで、彼は広島というクラブの価値を再定義したはずだ。その覚悟がプレーにどう反映されるのか。2026年シーズンの開幕戦、ピッチ中央で誰よりも走り出す背中に、スタジアムの視線が注がれる。


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